マリア・ベターニア『トゥア』|MARIA BETHANIA『TUA』(BF-914)_TNLBR_
マリア・ベターニア『トゥア』|MARIA BETHANIA『TUA』(BF-914)_TNLBR_
マリア・ベターニア『トゥア』|MARIA BETHANIA『TUA』(BF-914)_TNLBR_
¥2,750
◇無駄をはぶいた現代最高品質
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1.É o Amor Outra Vez 2.Tua 3.A Mão do Amor" / "O Que Eu Não Conheço 4.Até o Fim 5.Remanso 6.Fonte 7.Dama, Valete e Rei - Você Perdeu 8.Guriatã 9.Saudade (com Lenine) 10.Lamentação / O Nunca Mais 11.Domingo
◇
ベターニア、大好評を博したオマーラ・ポルトゥオンドとの魔女競演に続いては何と2枚同時リリース。もちろん新曲スタジオ盤。ビスコイト・フィーノ、相変わらず思い切ったイイ仕事。『トゥア』は最小編成で歌をじっくり聴かせるホマンチコなMPB。アートワークも顔写真のほかは手書き歌詞カードのみ、という潔さ。だがコンポーザー陣は強力無比。タイトル曲提供のアドリアーナ・カルカニョットをはじめ、バイーアの至宝サウル・バルボーザ&ジョルヂ・ポルトガル、ホベルト・メンデス&カピナン、さらにジョルヂ・ヴェルシロ&J.ヴェローゾ、セーザル・メンデス&アントゥニス、シコ・セーザル&モスカなど、まさに現代MPBの最高水準。贅を尽くした楽曲と歌唱の妙味に酔いしれるべし。⑨ではレニーニのデュエットも聴かせる。そして『エンカンテリーア』は極上サンバ! ただしヴィオラが効いたヘコンカヴォ(サルヴァドール近郊)の正調。こちらはバイーアの地の恵みに満ちた写真をふんだんに使ったアートワークが楽しい。カエターノ、ジルが参加した「75%ドーシス・バルバロス」の⑤は、郷里サント・アマーロの偉大な先人、ドナ・エヂッチ・ド・プラット(かつてカエターノの『アラサー・アズール』に参加し、先年86歳にして初のソロ・アルバムを発表した「皿とナイフ」を奏でながら歌う女性サンビスタ)の94歳での大往生を偲ぶもの。「エ・バイアーナ」を拝借したヴァネッサ・マタ作の⑩も併せ、まさに「妹の力」。全体にたおやかな印象だが⑥のピンと張りつめたダイナミズムはかつてのエドゥとの競演を思い出させる。両アルバムとも、常識的な意味での「質の高さ」は今更云々するまでもないのだが、還暦を過ぎたベターニア自身の歌が実に魅力的。円熟味を増す、というよりも、時に過剰なセンチメンタリズムに流れがちな感もあった若い頃よりも余分な脂が抜けてむしろ新鮮。魔女は年をとらない? いずれにせよ彼女自身、エヂッチや御母堂ドナ・カノーばりに「ドナ」の称号がふさわしくなってきた。
月刊ラティーナ2010年1月号掲載(輪島裕介)
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1.É o Amor Outra Vez 2.Tua 3.A Mão do Amor" / "O Que Eu Não Conheço 4.Até o Fim 5.Remanso 6.Fonte 7.Dama, Valete e Rei - Você Perdeu 8.Guriatã 9.Saudade (com Lenine) 10.Lamentação / O Nunca Mais 11.Domingo
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ベターニア、大好評を博したオマーラ・ポルトゥオンドとの魔女競演に続いては何と2枚同時リリース。もちろん新曲スタジオ盤。ビスコイト・フィーノ、相変わらず思い切ったイイ仕事。『トゥア』は最小編成で歌をじっくり聴かせるホマンチコなMPB。アートワークも顔写真のほかは手書き歌詞カードのみ、という潔さ。だがコンポーザー陣は強力無比。タイトル曲提供のアドリアーナ・カルカニョットをはじめ、バイーアの至宝サウル・バルボーザ&ジョルヂ・ポルトガル、ホベルト・メンデス&カピナン、さらにジョルヂ・ヴェルシロ&J.ヴェローゾ、セーザル・メンデス&アントゥニス、シコ・セーザル&モスカなど、まさに現代MPBの最高水準。贅を尽くした楽曲と歌唱の妙味に酔いしれるべし。⑨ではレニーニのデュエットも聴かせる。そして『エンカンテリーア』は極上サンバ! ただしヴィオラが効いたヘコンカヴォ(サルヴァドール近郊)の正調。こちらはバイーアの地の恵みに満ちた写真をふんだんに使ったアートワークが楽しい。カエターノ、ジルが参加した「75%ドーシス・バルバロス」の⑤は、郷里サント・アマーロの偉大な先人、ドナ・エヂッチ・ド・プラット(かつてカエターノの『アラサー・アズール』に参加し、先年86歳にして初のソロ・アルバムを発表した「皿とナイフ」を奏でながら歌う女性サンビスタ)の94歳での大往生を偲ぶもの。「エ・バイアーナ」を拝借したヴァネッサ・マタ作の⑩も併せ、まさに「妹の力」。全体にたおやかな印象だが⑥のピンと張りつめたダイナミズムはかつてのエドゥとの競演を思い出させる。両アルバムとも、常識的な意味での「質の高さ」は今更云々するまでもないのだが、還暦を過ぎたベターニア自身の歌が実に魅力的。円熟味を増す、というよりも、時に過剰なセンチメンタリズムに流れがちな感もあった若い頃よりも余分な脂が抜けてむしろ新鮮。魔女は年をとらない? いずれにせよ彼女自身、エヂッチや御母堂ドナ・カノーばりに「ドナ」の称号がふさわしくなってきた。
月刊ラティーナ2010年1月号掲載(輪島裕介)